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言葉 思考の断片 伝えたい、言葉
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     よく晴れた春の日に窓際でぼんやり外を眺めているあの人。
     まるで「触るな」とでもいうようないつもの棘々しさはなくて、だからかえって触れられない。
     外が明るければ明るいほど、部屋の中が薄暗く感じるように、あの人の内側にある暗がりがよりいっそう強くなっているみたいだ。
     いつものように軽く声をかけて、うるさいって追い払われたり、それでもめげずに肩を抱き寄せてみたり、なんて出来ない雰囲気。
     どうしよっかなーなんて、少し離れて座ってみる。
     じっと見つめたりはしないで、雑誌を膝の上に置いてさ、ただそうしているだけですって風を装って、ホントはあの人の呼吸一つさえ洩らさず感じ取ろうとしてる。
     主人が用事を終えるのを待つ飼い犬のように。
     ホントは、そうしている俺に気付いて欲しいなんて、ちょっとだけ思ってる。

     ねぇ、思いがけなく吹き込む冷たい風に、少し肩を震わせたならこっちを向きなよ。
     俺の薄い肩でもさ、上着一枚分くらいの温もりにならなるよ。
     暗闇の中に、僅かに灯る明かりになるよ。
     それくらいの役になら立つよ。
     ――あんたが望むなら、さ。

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    - | 2014/05/11 10:52 AM
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